75歳・男性
人生100年時代に、自立した生活を続ける心がけを教えてください
私は今年75歳になります。人生100年時代といわれますが、できれば、寝たきりなどにならずに、自立した生活を続けたいと思っています。そのために大切な心がけを教えてください。
明橋大二先生
健康的で幸せなシニアライフを送るための3つの心がけ
有名なドイツの哲学者、ヘーゲルの言葉に、「ミネルバのフクロウは黄昏に飛び立つ」という言葉があります。フクロウは、ギリシャ神話に出てくる女神アテネ(ミネルバ)の象徴であり、知性を司るとされています。
夜目の利くフクロウは、夕方から活動を始めるように、人間の知性が本当に輝きを放つのは、人生の黄昏、老年期に入ってからだ、という意味です。
実際、人間の知性というものは、年を取ったからといって、決して衰えるものではなく、身体の機能が衰える老年期において、なおさら磨きがかかる、むしろ年を取るほど輝きを増していく、といわれます。
それはいったいなぜなのでしょうか。
実は、人間の知的能力は、流動性能力と結晶性能力に分けられます。流動性能力とは、記憶力や計算力などで、これは個人差はありますが、20代をピークにして年齢とともに低下していきます。それに対して、結晶性能力というのは、経験に基づいて判断する能力のことで、これは加齢によって衰えることは少なく、むしろ年を取るにつれて高まっていくといわれます。
今までは、知能というと、記憶力のことばかり問題にされ、そこから、年を取ると、知的能力も落ちていくように思われていたのですが、実は記憶力は知能のごく一部であり、むしろ人間が生きていくうえで大切な経験知や判断力は、年齢とともに高まっていく、ということが分かったのです。
ただそれも人によって、維持・増進できている人とそうでない人がいるのも事実です。そこで、どうしたら、知的能力を維持し、100歳まで健康を保って生活できるのか、大切な心がけをお伝えしたいと思います。
そのためのポイントは次の3つです。
① 病気と仲良くすること
② 食べること(身体の維持)
③ 人の役に立つこと(生きがい)
どういうことか、一つずつ説明していきたいと思います。
① 病気と仲良くすること
まず一つめの「病気と仲良くすること」についてです。
高齢者になって、何の病気もないという人は少ないでしょう。高血圧、糖尿病、腰痛、膝痛など、一つや二つは持病を抱えている人がほとんどだと思います。私自身も、高血圧、高尿酸血症、脂質異常症、逆流性食道炎の薬など、毎日数種類の薬をのんでいます。もちろん病気がないに越したことはありません。しかし「一病息災」という言葉もあります。一つの病気を持つことで、その管理に心がけることによって、逆に健康を維持することもできる、ということです。大切なのは、病気があってでも、それを悪くしないこと、そして病気を持ちながらでも、自分のやりたいことができ、社会生活を送ることができれば、それでよしとする、ということです。病気があることにクヨクヨせず、病気を受け入れて、それとうまくつきあっていく、ということです。
認知機能についても同様です。年を重ねると・・・
(『月刊 人生の目的』令和7年5月号より一部抜粋)
続きの主な内容
- ② 食べること(身体の維持)
- ③ 人の役に立つこと(生きがい)
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