①大悲の願船 (だいひのがんせん)
この世も未来も幸せになる苦しみの人生を渡す大船
「大悲の願船」とは、親鸞聖人(しんらんしょうにん)の主著『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』に書かれているお言葉です。
親鸞聖人の著作には、いずれも、大悲の願船によって無上の幸せに救われた大歓喜が記されています。
親鸞聖人が教えられた大悲の願船とはどんなことかが分かれば、この世も未来も幸せになることができます。
親鸞聖人の教えといっても、仏教以外にはありません。仏教とは、釈迦の説かれた教えをいいます。
親鸞聖人は、その仏教に何が説かれているのかを、「大悲の願船」という言葉で明らかにされているのです。
大悲の願船とは、親鸞聖人が「阿弥陀仏(あみだぶつ)の本願(ほんがん)」を船にたとえられたものです。
阿弥陀仏とは、釈迦(しゃか)の先生にあたる仏で、弥陀(みだ)ともいわれます。
地球上で仏となられた方は、釈迦お一人ですが、大宇宙には地球のようなものは無数にあると、仏教では説かれています。その大宇宙には、数え切れないほど多くの仏が現れていると教えられているのです。それらの仏を、諸仏といいます。
阿弥陀仏は、釈迦のみならず、大宇宙の諸仏から、本師本仏(先生)と仰がれる仏さまなのです。
次に、本願とは、お約束のことで、誓願ともいわれます。
最高の仏である阿弥陀仏がなされているお約束を、阿弥陀仏の本願というのです。
経典を読破された親鸞聖人の断言
この弥陀の本願一つを伝えるために、釈迦は地球に現れて、仏教を説かれたのだと、親鸞聖人は、次のようにおっしゃっています。
(原文)
如来所以興出世(にょらいしょいこうしゅっせ)
唯説弥陀本願海(ゆいせつみだほんがんかい)
(『正信偈(しょうしんげ)』)
(意訳)
釈迦如来*(にょらい)が世に現れた目的は、海のように広く深い弥陀の本願唯一つを説かれるためであった。
ここで「唯説」と書かれているのは驚くべきことです。
なぜなら、釈迦の教えを記した経典は、七千冊以上あるからです。膨大な数のお経があることを考えれば、「釈迦は、多くのことを伝えようとされたのだ」と思う人もあるでしょう。
ところが、親鸞聖人は、この『正信偈』のお言葉で、「釈迦が仏教を説かれた目的は、唯一つであった」と明示されているのです。こんな断言は、誰でも彼でも、できることではありません。
親鸞聖人は、七千冊以上の経典を、何度も読まれ、そのすべてを理解されて「唯説」と言い切られているのです。
釈迦が唯一つ説かれたこと、それこそが弥陀の本願であると親鸞聖人は明言されています。つまり、仏教を聞くとは、弥陀の本願を聞くことであり、弥陀の本願一つが分かれば、仏教はすべて分かる、ということです。
*如来……無上のさとりを開かれた方のこと。仏と同じ
(『月刊 人生の目的』令和7年1月号より一部抜粋)
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