人が生きる意味を考えるチャンスは少ない
この連載で探求している「人生の目的」は、「人生の意味」と言い換えることができます。
「あなたの人生の意味は何ですか」と聞かれて、即答できる人は少ないでしょう。今日も多くの人に読み継がれている、神谷美恵子著『生きがいについて』にも書かれているように、生きる意味を真剣に考えた青年たちも、大人になると問うことを忘れ、流されて生きるようになるのです。
いうまでもなく青年期は一般に、もっとも烈しく、もっとも真剣に生の意味が問われる時期である。若いひとたちに日頃接している者ならば、だれでもおぼえがあろう。いったいどうして勉強などしなくてはならないのか、どうして生きて行かなくてはならないのか、どんな目標を自分の前においたらよいのか、と不安と疑惑にみちたまなざしで問いつめられたことを。このような問いに対してどのような態度をとり、どのような答をなしうるか、ということが親たる者、教師たる者の試金石の一つである。
ところがその青年たちも大人になると、いつしか生存の意味を問うことを忘れ、ただ生の流れに流されて行くようにみえる者が多い。
私たちが一生のうちで、「人生の意味」という大きなテーマを考える機会は、それほど多くはありません。確かに青年期は、進学や就職、結婚など、重大な選択を迫られるので、人生設計を真剣に考えさせられます。また、定年が近づいた人も、仕事を辞めたあとの20年、30年を、何に費やすかという問題に直面するでしょう。
しかし、それ以外に、人生を深く見つめる時があるでしょうか。ひとたび社会に出て、家庭生活を営むようになると、惰性と習慣の日々が続きます。今まで詳述してきた、五欲(下図参照)を満たすという、小さな目標に取り組んでいる間に、月日は飛ぶように過ぎ去ってしまうのです。
「人生の目的」と「生きがい」は異なる
では、生きる意味を聞かれて返事ができない人は、自分の人生は無意味だと思っているのでしょうか。決して、そうではありません。もし「私が生きていることに、何の意味もない」と心底から思っていたら、とても生き続けることはできないでしょう。
人はたいてい、各自の価値観に基づいて、「私の人生には意味がある」と思っているものなのです。
自分の人生に意味や価値があると感じさせてくれるものを、「生きがい」といいます。一口に「生きがい」といっても、人によって千差万別ですが、認知科学者のポール・サガードは、脳科学の見地から、それを「愛・仕事・遊び」の3つにまとめています。
人にとっての生きることの意味はすなわち、愛・仕事・遊びである。この3つは、それぞれ広義に捉えなければならず、愛には恋愛や家族への愛情のほかに、友情や他者への思いやりも含まれる。また、仕事には大工仕事などの肉体労働から、本を書くなどの知的作業まで含まれる。遊びは子どもたちがふざけまわることだけではなく、音楽や読書、スポーツ、旅行などの大人のための多様な娯楽も含む。
「生きがい」は、生きるための手段として大切なもの
愛する人がいたり、仕事に満足していたり、余暇を楽しんだりすることができれば、自分の生活は有意義だと思えると、サガードは言うのです。そのような「生きがい」は、楽しく生きていくためには、ぜひとも必要でしょう。しかし、「人間に生まれたのは、これ一つ」といえる「人生の目的」とは、異なります。
ほとんどの人生論では、「生きがい」も「人生の目的」も、同じ意味に使われていますから、違いを知るのは大変です。この2つを哲学的に区別すると、「生きがい」は「生活の意味」(meaning inlife)にあたり、「人生の目的」は「人生の意味」(meaning oflife)にあたります。
もっと具体的に、「生きがい」とは何か、分析しましょう。
「今現在、あなたの最も大きな生きる意味は何ですか」と尋ねると、どんな国や集団を対象にしても、答えは、ほぼ8つに分類されます。 大ざっぱにいえば、「生きがい」には8種類あるのです。それらは、生きるための手段として大切なものではありますが、生きる目的ではないことを、順に論じたいと思います。
(『月刊 人生の目的』令和7年4月号より一部抜粋)
<続きの主な内容>
- 典型的な8つの「生きがい」
1健康 2楽しみ 3所有 4仕事
- 仕事は手段にすぎない
全文は本誌をごらんください。
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