どれが本当の私?「心」を映す鏡とは

外見を映す鏡も大切ですが、仏教を説かれたブッダ(釈迦)は、「心を映す鏡は、もっと大事だよ」とおっしゃいます。 私の心を映す「三枚の鏡」があります。「他人鏡」「自分鏡」「法鏡」の三枚です。

それぞれの鏡の特徴を確認する前に、押さえておきたいポイントがあります。

「鏡の命は、ありのまま、真実の姿を映すことにある」ということです。

外見を映す鏡でも、実際よりも細身に、あるいは、太く映す鏡があります。そんな、自分の体が化ける鏡を見ていたら、どうなるでしょうか。

体重の増加に気づかず、「まだまだ大丈夫」と思って、つい食べすぎて後悔するかもしれません。反対に、もっと栄養を取らなければならないほどやせているのに、化けさせる鏡にだまされて、食べるのを控え、倒れてしまうこともあるでしょう。

鏡で最も大切なことは真実の姿を映すことにあるのです。

では、心を映す三枚の中に、真実の私を映す鏡はあるのでしょうか。

最初の、「他人鏡」とは、他人の心に映った私の姿を見て、自分とはどんな者かを知ろうとする鏡です。つまり、他人の評価によって、「自分は、つまらない人間だなあ」とか、「私は、まあまあ人気があるぞ」などと自身の値を確かめようとする鏡です。

私たちは常に、この他人鏡を気にしているのではないでしょうか。学校や職場で、他人の目や他人の言葉に一喜一憂し、友達や恋人、上司や部下から、どう思われているか、朝から晩まで神経を擦り減らしています。

ただ、ここで大事なことは、そもそも他人鏡に、私の姿は、正しく映っているのかどうか、ということです。

結論からいいますと、他人鏡は、本当の私を映してはくれません。なぜなら、他人鏡には、必ず都合が入り、真実の自己を映してくれないからです。

そのことは、自分が他人をどんな心で評価しているか、振り返ってみれば、分かりやすいでしょう。次の例で考えてみてください。

   ◆     ◆

ある町に引っ越してきたばかりのMさんは、通勤路を確認するため、車を走らせていました。しかし、慣れない道で対向車と接触、相手は逃げてしまい、困り果てていたのです。

すると、事故現場に駆けつけた警察官がMさんに優しく声をかけ、種々に対応したあと、広い道までパトカーで先導してくれました。Mさんは、「親切なお巡りさん!」と感激しました。

ところが翌日、Mさんがポストに手紙を投函して車に戻ると、駐車違反のステッカーが貼られていたのです。驚いたMさんは警察官に近寄り、「ちょっと止めただけですよ」と説明しました。

よく見ると、昨日と同じ警察官です。「私、越してきて間もないので、見逃してください」と、いくら頼んでも通じません。「なんて融通が利かない人!」とMさんは腹を立てたといいます。

   ◆     ◆

相手は同じ警察官なのに、Mさんの都合一つで、善い人が悪い人に、評価がコロッと変わりました。

このように、他人を見る時、自分勝手な都合を入れてしまうのは、Mさんだけではないでしょう。

(『月刊 人生の目的』令和6年10月号より一部抜粋)

続きは本誌をごらんください。


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