鴨長明が、「日野の里」に結んだ方丈庵を訪ねて

7月号の「アニメ映画『親鸞 人生の目的』に学ぶ」は、「歎異抄の旅・特別編」としてお送りします。

親鸞聖人は35歳の時に、権力者の弾圧によって、越後(現在の新潟県)への流刑を宣告されました。映画の中には、親鸞聖人を見送りに来た鴨長明が、「私はかつて、希望を失い、死んでしまおうと思ったこともありました」と告白するシーンがあります。

また、晩年の聖人が、「長明殿は、その後、念仏が禁止された都を離れ、日野の里に庵を結んだようじゃ」と語られています。

長明とは、どんな人生を歩んだ人だったのでしょうか。「日野の里」とはどこなのでしょうか。「庵」とは何を指すのでしょうか。

調べていくと『歎異抄』の「煩悩具足の凡夫・火宅無常の世界は、万のこと皆もってそらごと・たわごと・真実あることなきに、ただ念仏のみぞまことにておわします」のお言葉と、長明の間には、深い関係があることが分かってきました。

(意訳)火宅のような不安な世界に住む、煩悩にまみれた人間のすべては、そらごと、たわごとばかりで、真実は一つもない。ただ弥陀より賜った念仏のみが、まことである。

映画には、九条兼実が鴨長明に、「父君が亡くなられてから大変でしたな」と語りかけるシーンがあります。人生には、「大変」なことがつきものですが、長明は、まるでジェットコースターが急上昇、急降下を繰り返すような苦しみを味わっています。

長明の父は京都の下鴨神社の最高位の神官でした。全国に所領が多く、江戸時代に当てはめれば、大名クラスの家の御曹司として育てられたのです。やがて父の跡を継ぐことを夢みていたでしょう。

ところが長明が18歳の時に、父が急死したのです。長明は、後追い自殺を考えるほど、大きなショックを受けました。しかも、親族の間で争いがあり、長明は、将来の地位も、財産も奪われてしまったのです。

頼りにしていた父が亡くなり、親族にも裏切られ、この世の儚さを知らされるばかりでした。

彼は、現実から逃げるように、音楽と和歌の勉強に没頭していきます。やがて、ひたむきな努力が実を結び、長明の和歌の力が高く評価されるようになっていきました。

ついに、時の最高権力者から、当代随一の歌人と認められ、国家プロジェクトである『新古今和歌集』の編纂メンバーに抜擢されたのです。想像もできなかった栄誉をつかみ、長明の喜びは最高潮に達しました。

ところが、やがて周囲から横やりが入り、夢が砕けてしまったのです。ねたみ、そねみの煩悩が渦巻く人間の醜さを思い知らされるばかりでした。

どん底に落ちた長明は、すべてを投げ出して、失踪してしまいます。そんな時に、長明の心を救ったのが、真実の仏法との出会いでした。

どのようなきっかけであったのかは分かりませんが、「煩悩にまみれた人間のすべては、そらごと、たわごとばかりで、真実は一つもない」という教えを聞いて、強く引きつけられたのです。

映画の中で、長明は、親鸞聖人に向かって、「私はかつて、希望を失い、死んでしまおうと思ったこともありました。でも、法然上人よりご法話をお聞きして、生きる目的を知りました。阿弥陀仏の本願に救われるまで、仏教を聞いていくつもりです」と決意を表明しています。

これは、長明の、偽らざる心境であったことは、間違いありません。

(『月刊 人生の目的』令和7年7月号より一部抜粋)

88ページ/A4変型

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