~親鸞聖人ご生誕 8 5 0 年企画~
親鸞聖人には、夢の記録が多くあります。
ふつうの夢は朝になると、はっきり思い出せないものばかりです。しかし、親鸞聖人は夢の中で見た姿や形、聞いた言葉まで、極めて鮮明に述べられています。しかも、後日、そのまま事実となっているのです。
このようなことから、親鸞聖人の不眠不休の求道に御仏も感動し、夢の中にまで現れ教導なされたとしか思えない、といわれています。今回は、親鸞聖人の夢の記録の中でも有名な、「磯長の夢告」……大阪府・叡福寺 「女犯の夢告」……京都府・六角堂の旧跡を訪ねましょう。
「死んだらどうなるのか」救われる道を求めて
親鸞聖人は、4歳でお父さんを、8歳でお母さんを亡くされ、「死んだらどうなるのか」「次は自分の番だ」と死の影に驚き、9歳で仏門に入られました。天台宗の僧侶となり、比叡山で厳しい修行に打ち込まれます。
しかし10年後、求道に行き詰まられた親鸞聖人は、その解決の道を求めて、かねて崇敬されていた聖徳太子の御廟へ参籠されたのです。建久2年(1191)、19歳の時でした。
(中略)
「そなたの命はあと10年」聖徳太子からの夢告
親鸞聖人はこの場所で9月13日から、「聖徳太子さま。煩悩にけがれ、悪にそまったこの親鸞、救われる道がありましょうか。どうか、お教えください。太子さま!」と祈願を続けられたのでした。
すると夢の中に聖徳太子が現れ、とても衝撃的なことを告げられたのです。その内容は、高森顕徹先生の『親鸞聖人の花びら 桜の巻』に詳しく書かれていますので、以下、転載しましょう。
この時は、13日より15日までの3日間、おこもりなされたのですが、その間のことを聖人自ら、次のように書き遺しておられます。
私は、かつて母から聞かされていた、“夢に如意輪観音が現れて、五葉の松を母に授けて私の出生を予告した”という話を思い出し、観音の垂迹(すいじゃく)*である聖徳太子のお導きによって、太子ゆかりの磯長の御廟へ参詣した。
3日間、一心不乱に生死出離の道を祈り続けて、遂に失神してしまった。
第二夜の14日、四更(深夜2時)ごろ、夢のように幻のように、自ら、石の戸を開いて聖徳太子が現れ、廟窟の中は、あかあかと光明に輝いて驚いた。
その時、聖人に告げられた聖徳太子のお言葉を、次のように記されています。
我が三尊は、塵沙の界を化す。
日域は大乗相応の地なり。
諦に聴け諦に聴け、我が教令を。
汝が命根は応に十余歳なるべし。
命終りて速やかに清浄土に入らん。
善く信ぜよ、善く信ぜよ、真の菩薩を。
時に、建久2年9月15日、午時初刻、前の夜(14日)の告令を記し終わった。
仏弟子 範宴
範宴(はんねん)とは、当時の親鸞聖人のお名前です。
この時、聖徳太子が聖人に告げられた言葉の意味は、こうです。
「弥陀、観音、勢至の三尊は、チリのようなこの悪世の人々を救わんと尽力されている。
日本は、真実の仏法の栄えるに、ふさわしい所である。よくきけよ、よくきけよ、耳をすまして、私の言うことを。
そなたの命は、あと10年余りである。その命が終わる時、そなたは浄らかな世界に入るであろう。
だから真の菩薩を、深く信じなさい。心から信じなさい」ということでした。
聖徳太子の御廟は、河内国東条磯長(現・大阪府太子町)にありましたので、これを磯長の夢告といわれています。
この磯長の夢告は、親鸞聖人に何を予告し、どんなことが示唆されていたのでしょうか。
*垂迹……我々を弥陀の救いに導くために、仏や菩薩が姿を変えて現れること
(『月刊 人生の目的』令和6年7月号より一部抜粋)
続きは本誌をごらんください。
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