~親鸞聖人ご生誕 8 5 0 年企画~
親鸞聖人(しんらんしょうにん)は29歳の時、弥陀(みだ)の誓いどおりに、無上の幸福に救われました。そして、私たちに、「これは決して、親鸞だけのことではないのだよ。すべての人が弥陀の誓願(誓い)どおりに救われて、永遠の幸せになれるのだよ」と呼びかけておられます。
そんな喜びあふれる言葉を聞いて、感動したお弟子が、一言一言、書き留めたのが『歎異抄(たんにしょう)』でした。
今回の「歎異抄の旅」は、親鸞聖人が9歳で出家得度を受けられた青蓮院(京都市東山区粟田口)へ向かいます。
幼い子どもが出家して僧侶となり、比叡山へ上って厳しい修行に打ち込んだのですから、よほど重大な理由があったに違いありません。
その動機を明らかにするために、まず、親鸞聖人がお生まれになった頃の世相を確認してみましょう。
火宅無常の世界に、私たちは生きている
栄華を誇った藤原氏の没落
親鸞聖人が生まれた平安時代は、天皇と貴族を中心とした政治が約400年間も続きました。その実権を握っていたのが藤原氏です。
親鸞聖人は藤原氏の家系に、承安3年(1173)の春に誕生されました。
藤原氏といえば、十円玉の表に刻まれている平等院鳳凰堂を思い浮かべる人も多いでしょう。平等院は、藤原氏の全盛期を築いた道長の別荘を、息子の頼通が寺に改築したものです。
父の跡を継いで、地位、名誉、財産を手にした頼通でしたが、晩年になると、「やがて死んだら、どこへ行くのか」という不安が心を占めるようになりました。そこで、来世は浄土へ往生したいと願い、浄土にまします阿弥陀如来を本尊として建立したのが鳳凰堂だったといわれています。
平等院は、京都府宇治市にあります。JR京都駅から奈良行きの電車に乗ると、約20分で宇治駅に着きました。平等院までは、駅から歩いて約10分です。参道も境内も海外からの観光客でいっぱいでした。
壮大で美しい平等院を見るだけでも、藤原氏の権力、財力が、いかに大きかったかがうかがえます。
しかし、親鸞聖人がお生まれになった頃には、藤原氏の勢力は衰えていました。たとえ国一番の権力者になることができても、いつまでも頂上にとどまることはできないのです。
わずか20年の夢 西海に散った平家一門
平安時代の天皇や貴族は、武士のことを、「命令すれば、人殺しでも何でもする犬以下の存在」として扱っていました。武士を「地下人(じげにん)」と呼び、地面を這い回る虫のように思っていたのです。
この差別を撤廃させたのが平家の経済力でした。平家は、ただの武士団ではありません。西日本に拠点を置き、海上の流通経済網を独占しただけでなく、中国大陸との貿易にも乗り出し、巨万の富を築いたのです。
経済力があれば、軍備の充実も、大寺院の建立も可能になります。
平清盛は、都で起こった戦乱を勝ち抜いて、政治の世界でも重きをなすようになりました。
さらに、私費で大寺院(三十三間堂)を建立して後白河上皇*に贈ったのです。清盛が太政大臣(朝廷の最高官)に昇進したのは、その3年後でした。これは藤原氏に代わって、平家が政治の実権を、ほぼ握ったことを意味します。
『平家物語』には、「政治の要職は平家の者ばかり。まるで平家以外に人がいないような状態です」「すでに、日本全体の半分以上の国を、平家が支配するようになりました」「平家の邸宅の門前には、来訪者の車があふれています。中国大陸から、あらゆる金銀財宝が集められ、何一つ欠けているものはありません」(すべて意訳)と書かれています。まさに、平家全盛の時代を迎えたのでした。
しかし、誰もがうらやむ幸せと繁栄を手にしたはずなのに、平家はわずか20年あまりで、急速に崩壊していくのです。
*当時の朝廷の権力者
(『月刊 人生の目的』令和6年5月号より一部抜粋)
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