Q.高齢の父の部屋に、どんどん不要な物がたまっていくので困っています

50歳・女性

70代の父は、母を亡くして一人で暮らしています。様子を見に行くと、部屋には、今は使わない物や、昔の物がたくさんあります。

私が不要な物を処分するように言うと、「これは、取っておきたい」「あれも捨てたくない」と不満そうです。ついつい口げんかをしてしまうこともあります。

このような親に、どんなふうに接すればいいでしょうか。

明橋大二先生

「物を捨てられない」「自分の部屋や家の中に、不要な物がどんどん増えてくる」ということで、私の所にも、相談に来られる方が時々あります。多くは、ご本人というよりも、家族の方が心配して、あるいは困って、来られる方がほとんどです。

「物を捨てられない」理由にはいろいろあります。

もともとの性格として、「もったいない」と感じて、何でも残しておくタイプの人ということもありますし、幼少期に貧しくて、物のない時代を過ごしたので、物がないと不安になる、物があると安心する、という人もあります。

あるいは、物を捨てるには、思い切りというか、一種の決断が必要ですが、それにはある程度の心のエネルギーが必要です。ところが、精神的に疲れたり、うつ病になったり、ひきこもりの状態になったりすると、そういう決断ができなくなり、それでどんどん物がたまっていく、ということもあります。

あるいはお年寄りで認知症の始まりとして、買ったことを忘れてしまい、再度買う、また、物が家にあるかどうか覚えられないので、不安からついつい捨てずに残してしまう、ということもあります。

それらがエスカレートすると、いわゆる「ためこみ症」という病的な状態になります。

これは、英語で「ホーディング」といい、「DSM‒ 5」という、アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」(2013年)で初めて記載されました。

「ゴミ屋敷」というと、日本でしばしば社会問題になっていますが、これは日本だけでなく、世界各国でも近年問題になっています。これを引き起こすのが「ためこみ症」という病気です。

「ためこみ症」の症状は以下のようなものです。

① それほど価値はない物でも、捨てたり、手放したりすることが困難。
② 物を捨てることに、強い苦痛を感じる。
③ 捨てられないことによって、生活空間が物でいっぱいになり、部屋が本来の目的で使えなくなる。
④ 安全な環境の維持が困難になり、社会的に支障が出ている。

ご相談のお父さんの場合は、「ためこみ症」といえるほどの病的な状態ではないと思いますが、気持ちのうえでは共通するところもあるのかもしれません。

私が、「ためこみ症」も含めて、お年寄りで「物を捨てられない」人の相談で、しばしば感じるのは、その人の「孤独」です。

独り暮らしであったり、家族と暮らしていてもふだんの会話がほとんどなかったり、大切な人を失ったり、という状況が、たいていあります。そういう人にとっては、周りに慣れ親しんだ「物」があることが、孤独を癒やし、安心感を得る、大切な手段になっているのかもしれません。

ところが周囲から見て必要のない物が、どんどんたまっていくと、周りは何とかしようとして、無理やり片付けようとしたり、注意したりします。しかし本人としてはそれらの物が生きていくうえでの心の支えになっているわけですから、当然抵抗したり、言うことを聞かなかったりします。そうすると、よけいに周囲といさかいになり、孤立を深めます。そうすると、さらに物をため込む、という悪循環になってしまうのです。

(『月刊 人生の目的』令和8年3月号より一部抜粋)

88ページ/A4変型
定価:700円(税込)


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