ヤングケアラーとは?ヤングケアラーが抱える4つの問題

こころの相談室

70代・女性

私の息子は、離婚した時に、小さい子どもが2人いました。それ以来、男手一つで子どもを育ててきました。ところが昨年、その息子が脳梗塞を発症し、命は取り留めたものの、右半身に麻痺が残り、仕事に就けない状態が続いています。そのため、中学生の長女が、家事のうえに、父親の介護、弟の世話まで担うことになっています。私も夫の介護もあり、なかなか手伝ってやることもできません。息子のことも心配ですが、孫のことも心配です。どのように支えていけばよいでしょうか。

明橋大二先生

父親一人で子どもを育ててきたのに、その父親が脳梗塞で倒れ、その介護を長女が担っているという状況、相談者の方が心配される気持ちも無理はないと思います。

実はこの長女の方のように、未成年でありながら、親や祖父母の介護を引き受け、家事全般を担っている子どもを、「ヤングケアラー」といいます。

現在、日本の中高生の中で「ヤングケアラー」の状態にある子どもは、7.4パーセントといわれており(2022年、東京大学調査*1)、虐待やいじめと並んで、子どもをめぐる大きな社会課題であることが、近年、認識されるようになってきました。(中略)

ヤングケアラーは、他人からは、家族思い、きょうだい思いの、優しい子どもと見られることはあっても、その子自身にケアが必要とは、今まで考えられてきませんでした。 本人自身も「私が家族を支えなきゃ」と思って頑張っているわけですし、誰かに助けを求めようとは思っていない場合があります。

しかし近年、ヤングケアラーという認識が広まるにつれて、こういう状態をそのままにしておくのは、子どものために決してよくない、むしろヤングケアラーにも、ケアが必要、と考えられるようになってきました。

ヤングケアラーの子どもは、通常の子どもよりも、下記のような点で、困難を抱えていることがあります。

家に帰っても、家事や家族の世話に追われ、勉強の時間が取れない。家族の通院などで、学校を休まざるをえないこともある。経済的な事情で、進学をあきらめざるをえない。

子どもにとって、一番の相談相手は親だが、その親に病気や障がいがあると、なかなか相談することができない。また親戚や学校の先生にも、家族のことだと相談できないと感じる子どももいる。

家族のために、とりあえず日銭を稼ぐことが求められ、資格を取ったり、専門的な勉強をすることが後回しになり、職選択の幅も狭められることがある。

放課後や休日にも、家事や家族の世話が必要なために、友人と会ったり、遊びに出かけたりすることが限られる。また友人にも家族の状況を話すことができないために、孤立していくこともある。

以上のような状況から、本来、子どもとして当然受けられるはずの世話や保護、教育が受けられず、それがその子の今後の人生に影響してしまうことがあるのです。

*1 「家族のケアを担う子ども・若者の実態把握へ」笠井清登,金原明子
  https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2022/09/21/release_20220921.pdf

(『月刊 人生の目的』令和7年2月号より一部抜粋)

<続きの主な内容>

  • ヤングケアラーの子どもを、どう支えるか

全文は本誌をごらんください。


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