物忘れや言い間違いが多くなった高齢の父に、どう接すればいいのでしょうか
82歳になった父は、曜日や人の名前を間違えて言うことがあります。初めのうちは、間違いを正していたのですが、そうすると、情けないような顔をするので、申し訳なく思い、大きな問題がなければ、笑って相槌を打つようにしていますが、これでいいのでしょうか?
年相応のことなのか、認知症の症状なのか、判断できないので、病院に行こうと勧めるのですが、本人は「行きたくない」と言います。
年を取ると、誰でも忘れっぽくなります。人の名前が出てこない、物をしまった場所を忘れる、などは、どんな人でも経験することではないかと思います。
私はよく患者さんから、「最近、忘れっぽくなった。認知症ではないか」と聞かれることがあります。単なる物忘れは、自然な脳の老化現象ですが、認知症は病気です。ではどこが違うのか。
私は端的にこのようにお答えしています。「朝ごはんに、何を食べたか思い出せないのは、物忘れ。朝ごはんを食べたこと自体を忘れるのが認知症」
年を取ると、今日の朝ごはんに何を食べたか、思い出せないことはあると思います。しかし朝ごはんを食べたこと自体は覚えています。これはまだそれほど病的な状態ではありません。しかし認知症になると、朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまいます。ですから、認知症の人は、朝ごはんを食べたのに、「まだ朝ごはん食べとらん! まだか!」と怒るのです。いくら、「さっき食べたでしょ?」と言っても本人には記憶がないので、最後はけんかになってしまいます。
さて、ご質問の方のお父さんについてですが、文面だけでは病的なものかどうか判断はできませんが、いずれにせよ、加齢による記憶障害が出てきておられる状態なのだと思います。
このような物忘れに対して、その間違いをいちいち指摘することは正しいか、正しくないか。これについては、介護の現場でははっきり結論が出ています。
「記憶の間違いをいちいち指摘することはよくない」です。
なぜなら、このような物忘れによって、家族ももちろん困りますが、いちばん困っているのはお父さんご自身だからです。だからこそ、「情けないような顔」をされるのだと思います。
自分の記憶が、不確かなものになり、家族に迷惑をかけている。自分に自信をなくし、「これからどうなるんだろう」と不安になっている。そういう時に、周囲から何度も間違いを指摘されると、さらに自信をなくして意欲を失ったり、「バカにして!」と腹を立てたりすることになります。間違いを指摘しても、状態が改善するどころか、よけい逆効果になるのです。
(『月刊 人生の目的』令和6年6月号より一部抜粋)
続きは本誌をごらんください。
\ 最新号から定期購読できます /
書店では販売しておりません
定期購読なら[最大30%オフ・送料無料]
【 最新号 】 12月号
A4変型,80ページ,オールカラー
11月25日発売 定価:700円(税込)
自利利他の精神で、命を守る
病気が治らなくても、みんなが幸せになれる医療を
◯ 真生会富山病院
真鍋恭弘院長にインタビュー
諸行無常 (しょぎょうむじょう)
すべてのものは続かない
変わらない幸せはどこに?
◯ 1からわかるブッダの教え 令和版 仏教辞典
今日は、お奉行さまご多忙で、お調べがありません
遺産分配で争っていた兄弟
◯ 光に向かって 高森顕徹
Q.ひきこもっている息子にどう関わったらよいでしょうか
◯ こころの相談室 心療内科医・明橋大二
アパートの生活でトラブルが起こったら
◯ これから先の不安に答える 弁護士・小堀秀行
山伏・弁円は、ガラリと生まれ変わり、親鸞聖人のご恩に泣いた
◯ 歎異抄の旅 木村耕一
「備えあれば、憂いなし」
災害への最も大事な備えとは
◯ 私たちは、なぜ生きるのか 哲学者・伊藤健太郎
野菜が主役なお料理ガイド
◯ブロッコリーの豆腐キッシュ ほか
野菜料理家・月森紀子
父は私が出した手紙をいつまでも持っていてくれた ほか
◯ 親のこころ
老病死を超えた幸せ
◯ 漫画 ブッダ 古澤たいち