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日本では、子どもの自殺が増え続けています。
政府が、10月24日に公表した2025年版「自殺対策白書」によると、昨年の自殺者数は2万320人。
そのうち、小中高生の自殺者数は529人と、過去最多となりました。一週間あたり約10人もの子どもたちが、自ら命を絶っていることになります。
これを受けて、上野賢一郎厚労相は記者会見で「依然として深刻な状況だ。誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指し、対策を進めていく」と述べています。
自殺を防ぐには、何が大切なのでしょうか。真生会富山病院心療内科部長の明橋大二先生にインタビューしました。
明橋先生は、命の尊さを伝える書籍『なぜ生きる』の著者の一人であり、国内のみならず海外でも、人生の目的を知ることの大切さを伝える講演を続けられています。
── 昨年の子どもの自殺者数が、これまでで最も多くなったことが、大きな問題になっています。どんな対策が必要なのでしょうか。
明橋 問題の根っこは、大人自身が「生きている意味」を感じられていないことにあるのではないでしょうか。それでは子どもにも伝えることができないでしょう。
『なぜ生きる』に、次のように書かれています。

『なぜ生きる』
高森顕徹 監修
明橋大二・伊藤健太郎 著
1万年堂出版 刊
戦争、殺人、自殺、暴力、虐待などは、「生きる意味があるのか」「苦しくとも、生きねばならぬ理由は何か」必死に求めても知り得ぬ、深い闇へのいらだちが、生み出す悲劇とは言えないだろうか。
たとえば少年法を改正しても、罪の意識のない少年にどれだけの効果を期待しうるか、と懸念されるように、これら諸問題の根底にある「生命の尊厳」、「人生の目的」が鮮明にされないかぎり、どんな対策も水面に描いた絵に終わるであろう。
これは、私も、日々の診療で感じていることです。
── 明橋先生は精神科医でいらっしゃいますが、「生きる意味があるのか」と患者さんから問われることはありますか。
明橋 「死にたい、死にたい」と訴える患者さんが多いですね。
── そのような苦しみの声を聞き続けることは、医師にとっても、つらいことではないでしょうか。
明橋 苦しみを「聞く」「共感する」「つらさを理解する」ということは、患者さんの気持ちになって考える、ということですから、こちらにも影響はありますし、特に、力及ばず亡くなっていかれる患者さんがあると、「何のために医者をやっているのか」と、自分の存在意義を問う気持ちになります。
また、患者さんの中には、つらい気持ちをぶつけてくる人もあります。「先生のせいだ」「なんで治してくれないのか」「殺してくれ」というように訴えられたら、医師として、無力感に襲われてしまいます。
そんな中で、私の先輩の精神科医の中には自殺していった人もあります。後輩の中には、うつ病になって、突然死した人もあります。「なぜ自殺してはいけないのか」「何のために生きているのか」というのは、患者さんだけの問題ではなく、医師自身の問題でもあると思います。
── 明橋先生は、どのようにして乗り越えられているのですか。
明橋 まじめに患者に取り組もうとしていた医師が、このように亡くなっていきました。自分と同じような考え方でやっていた人が、次々に亡くなっていったのです。そうすると、次は自分の番ではないかと真剣に思いました。
そんな時に支えになったのが、大学時代に学んだ『歎異抄(たんにしょう)』であり、親鸞聖人(しんらんしょうにん)の教えだったのです。
もし、仏教を聞いていなかったら、先輩の医師と同じように自殺していたか、心を病んでいたか、享楽主義に走っていたと思わずにおれません。
(『月刊 人生の目的』令和7年12月号より一部抜粋)

88ページ/A4変型
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