【諸行無常】すべてのものは続かない 変わらない幸せはどこに?

諸行とは、森羅万象、この世のすべてのものを指します。諸行に入らないものはありません。無常とは、常がない、続かないということです。

私たちは、今の状態が、いつまでも続くように思っていますが、諸行は無常ですから、その思いは正しくありません。すべてのものは例外なく移り変わっていくのです。

例えば、朝から晩まで時間さえあれば、つい触ってしまうスマートフォンにも寿命がありますので、使い続けたら、いろいろな不具合が出てきます。電池の減りが速くなったり、動作が遅くなってきたりします。急に電源が落ちたり、本体が熱くなったりするなど、使いづらくなってきて、「そろそろ替え時かなあ」と悩んでいる人もあるでしょう。

まだ新品のスマートフォンを、うっかり落としてしまったり、入浴時に使用して水没させてしまったりすることもあります。「買ったばかりなのに……」と、泣く泣く店へ駆け込み、修理を依頼した人もあるかもしれません。

また、家を新築しても年数がたってくると、風雨にさらされ、徐々に傷んでいきます。

痛ましいことですが、地震や台風などの突然の災害で、大事にしていた家が崩れたり浸水したりして、嘆き悲しんでいる人も多くあります。

楽しい時間も、長くは続きません。オリンピックなど、スポーツの世界大会が閉幕した時、「ああ、終わってしまったのか。もう試合を見て応援することもできないのだなあ」と、心にポッカリ穴が開いたような寂しさに襲われたことはないでしょうか。学園祭や好きなアーティストのライブなど、熱狂すればするほど、終わったあとの空虚感は深くなります。

人の心も移ろいやすいものです。「ずっと一緒にいたい」と熱烈に誰かを愛しても、数年後には、「顔も見たくない」に変わることもあるのです。

そんな心を、変化の激しい秋の空になぞらえて、「男心と秋の空」とも「女心と秋の空」ともいわれます。性別問わず、心は変わりやすいものだからでしょう。心も無常なのです。

多くの人が最も大切にしているのは、健康ではないでしょうか。日頃から、塩分や糖類の取り過ぎに注意したり、サプリメント(栄養補助食品)を飲んだりするのも、健康を維持するためです。運動不足にならないようにと、筋トレやウオーキングを日課にしている人もあります。

しかし、健康も長続きはしません。昨日まで何ともなかった友人が、突然の腰痛で、つらそうにしているのを見ると、「自分も、今は元気に階段を駆け上がっているけれど、いつどうなるか分からないな」と不安になります。 何十年と病気知らずで過ごしてきた健康自慢の人も、久しぶりに受けた人間ドックのあと、「再検査が必要」と告げられたらドキッとするでしょう。

悲しいことに、若さも続きません。いつまでも髪の毛はフサフサで、お肌もツヤツヤならいいのですが、そういうわけにもいかず、昔の写真と見比べて「老けたなあ」と、がっかりすることも、しばしばです。「あの人、誰だったかな?」と、名前がとっさに出てこないことも増え、記憶力の低下を実感し、寂しく感じる瞬間もあるでしょう。

テレビを見ていて、有名人が亡くなったというニュースを聞くと、ドキッとします。どんな人も、永遠に生きることはできません。必ず旅立つ時が来ます。誰も死にたくはないのですが、一日一日死に近づいているのが私たちの実態なのです。何より深刻なのは、命の無常です。

(『月刊 人生の目的』令和6年12月号より一部抜粋)

続きは本誌をごらんください。


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