「目標」と「人生の目的」は、根本的に違う
先号に続いて、8種の「生きがい」を順に考察します。
5.目標
「自分の能力を向上させること」を重視する人もいるでしょう。そういう努力家は、より高い「目標」を一つ一つ達成していくことに、生きる喜び(生きがい)を感じているのです。
何か成果や記録を出そうと思ったら、目標を立てることは必須でしょう。目標があってこそ、努力を続けられるからです。例えば、同じアスリートでも、単に好きだから打ち込んでいる人と、貧困国に生まれ、大家族を養うためにトップを目指している人とでは、精神的な強さに大きな差が生じます。
しかし、目指す目標が、他人から「評価されること」や「期待に応えること」だった場合、達成できなかった時に、「何のために苦労してきたのか」「自分に生きる価値があるのか」と失望しなければなりません。
東京五輪のスター
円谷幸吉の悲劇
昭和39年(1964)に開催された東京五輪マラソンで、最終地点の国立競技場にトップで入ってきたのは、エチオピアの「鉄人」アベベ・ビキラでした。そのままゴールインすると、前人未到のマラソン二連覇を果たした英雄の誕生に、スタンドは総立ちになりました。次に大観衆が注目したのは、2位の選手です。ややあって現れたのは、日本の円谷幸吉でした。またもやスタンドが熱狂に包まれる中、ゴールまで250メートルに迫った円谷を、後ろについていたイギリスのベイジル・ヒートリーが一気に追い抜きます。すでに限界だった円谷は、3秒差で3位となりました。ベルリンオリンピック(1936年)以来、陸上種目で日本人がメダルを取ったのは、これが初めてでした。一躍、スポーツ界のスターとなった円谷には、「4年後のメキシコ五輪では金を」という期待が、重くのしかかります。本人も、次のメダルは「国民との約束」と思い込んでいました。それが悲劇の始まりだったのでしょう。
(『月刊 人生の目的』令和7年5月号より一部抜粋)
続きの主な内容
- 小さな目標の積み重ね有森裕子選手の努力
- 「目標」を追う道は、必ず壁にぶつかる
\ 最新号から定期購読できます /
【最新号】12月号 pickup
「人生の目的」こそ、心の健康の土台
苦しくても、なぜ生きるのか
その答えは『歎異抄』に
『なぜ生きる』の共著者・真生会富山病院心療内科部長 明橋大二先生にインタビュー
◯ 巻頭企画
【因果の道理】「自分が悪い」と、なぜ、思えないのか
◯ 1からわかるブッダの教え 令和版 仏教辞典
カルダイ尊者と欲深婆さん②
◯ 漫画 ブッダ 古澤たいち
玉日姫の願い
「いつまでも変わらぬ幸せになりたい」
◯ アニメ映画『親鸞 人生の目的』に学ぶ 歎異抄の旅 特別編
利他(親切)を実践すると、小さな悩みは吹き飛ぶ
◯ 私たちは、なぜ生きるのか 哲学者・伊藤健太郎
Q.80歳を超えて、介助が必要な父と母の、やりとりが心配です
◯ こころの相談室 心療内科医・明橋大二