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俳優の里見浩太朗さんは、こう語ります。
「映画『なぜ生きる』を、ずっと上映し続けることが、現代の人々に、『あきらめないで生きていきましょう』というメッセージを届けることになります。このアニメを見た人は、生きる希望を得ることができると思いますよ」

里見さんはこれまで、映画や舞台で、「忠臣蔵」の大石内蔵助、「田原坂」の西郷隆盛、「風林火山」の山本勘助など、数多くの時代劇のヒーローを演じてきました。
「ミスター時代劇」とまでいわれる里見さんが、80歳で新たに挑戦したのがアニメの声優であり、室町時代に命懸けで「人は、なぜ生きるのか」を伝えられた蓮如上人(れんにょしょうにん)でした。
完成したアニメ映画『なぜ生きる』が2016年に劇場公開されるや、29週連続上映の大ヒットを記録。その後も、日本全国でホール上映が続けられ、大きな反響を呼んでいます。
劇場公開10周年を記念し、主演の里見浩太朗さんにインタビューを申し込みました。90歳になる里見さんは、忙しいスケジュールの中、インタビュー会場の東京プリンスホテルに颯爽と現れ、制作時のエピソードや映画の魅力を、温かい笑顔で語ってくださいました。
── アニメ映画『なぜ生きる』が劇場公開10周年を迎えました。映画館とホール上映に参加した人を合わせると、15万人を超え、今もなお、上映が続いています。
里見 それは、すごいですね。僕も、スタジオで蓮如上人の声を収録している時、この映画は、心温まる、とてもいい作品だと思っていました。
── 時代劇の大御所であり、国民的スターの里見さんが、アニメ映画の主演に挑戦されたことは、映画公開時に、新聞やインターネットのニュースで報じられ、話題になりましたね。
里見 蓮如上人の声を演じてほしいという話を頂いた時、まず、「えっ、アニメ!」という思いが起こりました。
これまで多くの映画や舞台に出させてもらいましたが、アニメはやったことがなかったのです。「新しい仕事だ、挑戦してみよう」という心が生まれてきました。
何よりも、高森顕徹(けんてつ)先生の脚本が、とても素晴らしかったのです。ものすごい情熱と根気がなければ、絶対に書ける内容ではありません。僕は、脚本に感動して、「ぜひ、やらせていただきたい」と決意したのです。
── アニメ声優としての演技は、実写の映画と比べて、どのような違いがありますか。
里見 実写ならば、体で演技をし、眉や目の動かし方で感情を伝えることができます。しかし、アニメの場合は、声だけです。絵で表現できる人間の感情は、実写よりも、はるかに少ないのです。そのため、アニメ映画を見ている人に、蓮如上人の気持ちを感じてもらうには、実写の倍以上の神経を使いました。非常に難しい挑戦でしたね。
── 特に難しかったのは、どんな場面だったでしょうか。
里見 蓮如上人が、寺の本堂に集まった参詣者に向かって、仏教を、分かりやすく説かれるシーンです。とても長い説法だったので、大変でした。
でも、その難しさの中に、楽しさが、どんどん生まれてきたのです。
僕自身が、脚本を読んで、「そうなんだ! 人が生きるには、こういうことが大切なんだ」と感動しながら、蓮如上人を演じていました。
スタジオでセリフを収録する時に、高森顕徹先生が聞いていらっしゃって、「そこは、もっと、こうしたらいい」と、何度も教えてくださいました。
もう一回、復習して、蓮如上人を演じてみたいと思うくらい、楽しかったです。
(『月刊 人生の目的』令和8年1月号より一部抜粋)

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