有無同然 (うむどうぜん)
「仕事が多くて忙しすぎるのは嫌だけど、仕事が少なくて暇なのも、つらい」
「ずっと独りぼっちは寂しい。でも、結婚すると、自由が減る。〝独身貴族〟のほうがいいかな」
「広い庭付きの大きな家にはあこがれるけれど、掃除や防犯対策、税金など大変そう」
どっちのほうが幸せなのだろう?
こんな悩みを、抱いたことはないでしょうか。
仕事が充実すれば、結婚できれば、素敵なマイホームを持つことができれば幸せになれる。そう思っている人は、少なくないでしょう。
しかし、仏教を説かれた釈迦(ブッダ)は、「それらのものが、有る人も無い人も、どちらも苦しんでいることは同じなのだよ」と教えられているのです。これを「有無同然(うむどうぜん)」といい、『大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)』という経典の中で、次のように説かれています。
田なければ、また憂いて、田あらんことを欲し、宅なければ、また憂いて、宅あらんことを欲す。田あれば田を憂え、宅あれば宅を憂う。牛馬(ごめ)・六畜(ろくちく)・奴婢(ぬび)・銭財(せんざい)・衣食(えじき)・什物(じゅうもつ)、また共にこれを憂う。有無同じく然り(『大無量寿経』)
(意訳)田畑や家が無ければ、それらを求めて苦しみ、有れば、管理や維持のためにまた苦しむ。その他のものにしても、みな同じである。
*「牛馬・六畜」とは家畜。「奴婢」とは家政婦や家政夫。「銭財」とは金や財産。「什物」とは家財道具。
以下から引用の内容を解説していきましょう。
田なければ、また憂いて、田あらんことを欲し
米や野菜を育てて生計を成り立たせようとするならば、まず、田畑が必要です。
狭い土地しかなければ、「もっと広い、米や野菜作りに適した田畑が欲しい」と思うでしょう。そうなれば、多くの米や野菜を収穫することができ、それだけ収入は大きくなります。つまり、ここで「田あらんことを欲し」と説かれていることは、「もっと、お金が欲しい」「経済的に豊かになりたい」と言い換えられるのです。
宅なければ、また憂いて、宅あらんことを欲す
宅とは、家のことです。
しばらくは、借家暮らしで我慢していても、結婚したり、子どもが生まれたりするなど、ライフスタイルに変化があった時には、「そろそろ、賃貸住宅を卒業したい」と、マイホームが欲しくなってきます。
同僚の新築祝いパーティーに招かれ、幸せそうに過ごす友人家族を目の当たりにすると、ますます、その思いは強くなるでしょう。
有れば別の苦しみが次々と
では、田畑や家が、思うように手に入れば、幸せになれるのかというと、次に、釈迦は、「田あれば田を憂え、宅あれば宅を憂う」とおっしゃっています。土地やマイホームが有ることで、別の憂い(苦しみ)が出てくると教えられているのです。
(『月刊 人生の目的』令和6年11月号より一部抜粋)
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◯ 歎異抄の旅 木村耕一
①有無同然 (うむどうぜん)
「有っても無くても苦しみ」の毎日が
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②苦悩の根元 (くのうのこんげん)
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